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  • 執筆者の写真Yoji Yoshizawa

トレモロとポリリズム

声や、息を使う楽器のように、長い音を演奏することは生ギターやピアノでは不可能です。音がそれほど伸びないということもありますが、弾いた音に加えられる変化も限られています。 そこで「トレモロ」という技法を使うのです。トレモロは同一の音を小刻みに連続して演奏し、音の減衰に抗う手法です。 クラシックギターには有名な「アルハムブラの思い出」という曲がありますが、これは全編トレモロにより美しいメロディが歌われます。これはどのように演奏されるかと言うと、譜例の1小節目に示したようにベース音を親指で弾いた後に、薬、中、人差し指の順(ギター譜の表記ですとa, m, i)で小刻みにメロディ音を連続して弾きます。これをある程度のスピードで演奏すると声のように聴こえますし、抑揚がつけられるわけです。 フラメンコにおいてもトレモロ技法は使われます。特にアレグリアスというパロでは中間部分のシレンシオで良く出てきます。クラシックギターの技法では、トータルで4つの音を弾くのですが、フラメンコでは5つ弾きます。親指、人差し指、薬指、中指、人差し指の順です(譜例、2小節目)。 因みに、現代中国の琵琶は右手に5連符のトレモロテクニックがあります。天津公演の折に琵琶奏者からやり方を教わったのですが、フラメンコのラズゲアードのようにピック(スカルプ)を貼った指を外向き、閉じた手を開くかんじで弦をはじきます。その場合、同じ5連符でも、フラメンコのように重複して使われる指はなく、親指を含めた5本の指でメロディーを奏でます。琵琶の場合はベース音を弾く要請がなく、メロディに特化しているためにこのような奏法になったのでしょう。 閑話休題。譜例3小節目は、フラメンコに見られる複雑な奏法の応用です。メロディは5連符で演奏しているのですが、1拍3連のベースがそれに併せられます。5:3というとても難しいリズムになっているんですね。 さらには譜例4小節目のようにメロディの一部が変化して、装飾がほどこされたりもします。第4小節の3拍目、ミミファミとなっているのがそれです。 実践的な習得法としては、ゆっくりとしたスピードで指の運びを覚えます。規則的、機械的な動きですので、楽器を持たずにエアーでやってみることから始めると上達が早くなります。次には、本来の長い音符を歌うことに注力することが望まれます。譜例1小節目ですと、ミの音が長い歌のようにサウンドするように演奏することを目指すのです。 5:3の難しい譜割りを体得する場合も、以外と歌ってみることから得られるものも大きいとアドバイスすることが多いです。というのも細分化された1拍に神経を注ぐことより、大きな文脈で捉えた方が「できてしまう」のです。5:3の場合は機械的にメロディを演奏できるようにしてあれば、1拍3連のフレーズがちゃんと聴こえるように練習すれば良いわけです。 とにかく「やってみる」ことと、頭脳的に理解することは異なるものです。身体からフィードバックされる情報がとても大切で、これを得るには「できなくても、やってみる」ことです。5:3のトレモロ・フレーズなどは、それの好例ではないでしょうか。



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