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  • 執筆者の写真Yoji Yoshizawa

シアーズ・ローバックとアメリカン・ポピュラー音楽

(オリジナルFB投稿:2018年10月15日) シアーズが、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用をニューヨーク州の裁判所に申請したというニュースが入りました。


シアーズは創業1892年の小売り業者で、1906年の株式公開以降、シカゴの小さな通販会社として営業を始めました。シアーズのカタログは拡張を続け、広大なアメリカで消費者が近所では購入不可能な商品を手に入れることを実現しました。


シアーズの破産の報を感慨深く聞いたのは、この会社の通販が実質上、アメリカ音楽を支えたと言っても過言ではないからです。


楽器屋などがない場所に住んでいたデルタ・ブルースマンは、板、釘、ワイヤーから作られた単弦のディッドリー・ボウ(single-string didley-bow)で演奏していました。そこに現れたのが、シアーズのカタログに記載された、安いギターです。ギターは持ち運びが容易ですし、リズム、ハーモニー、ともに演奏可能です。さらにボトルネックを使うことにより、ディッドリー・ボウの独特の泣きも再現できるのです。


1930年には、マディー・ウォーターズが中古のステラを買いました。B.B.キングは、シアーズから手に入れた入門書でギターの初歩を学びます。


ブルースマンたちだけではなく、ローイ・クラークのようなカントリー・ミュージシャン、そして、巨匠チェット・アトキンズも最初のギターはシアーズの「シルバートーン」(Silvertone)のアコースチックでした。


ブルースやカントリーの黎明期のみにあらず、シアーズはエレキギターの普及にも多大なる影響を及ぼします。ジミー・ペイジが使っていたことで知られるダンエレクトロギターは、当初、ケースと5インチのスピーカーとアンプのセットで販売されました。ダンエレクトロはネック以外にはまったくコストをかけないギターを作り、ダンエレクトロ・シルバートーンはギブソンやフェンダーとはまったく異なる、強烈な個性を持つギターとなりました。

デルタ・ブルース、ロカビリーやロックも、シアーズの販売網とチープな楽器がなければ異なる歴史をたどっていたでしょう。



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