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  • 執筆者の写真Yoji Yoshizawa

Mellow Yellow

昨晩、吉澤洋治Jazz Projectのコンセプトを再考しているときに「Mellow」というキーワードからこの曲を思い出しました。


カーナービー・ストリート文化のイギリス、ヒッピー文化のアメリカ。後者の一部が反ベトナム戦争であったことを思い「Mellow Yellow」は、「のんびりした臆病者」という意味なのか?とぼんやり考えていました。


Mellowは動詞として使う場合は熟成という意味が強いのですが、俗的形容詞としての意味はのんびり、柔らかいなど、今でいえばLOHAS的な雰囲気を表しています。

Yellowは最近Politically Correctではないスラングの意味として「臆病者」、「ヘタレ」というものがあります。


反戦を主張し、臆病者と揶揄されつつ兵役拒否をしている、柔らかな「Mellow Yellow」と呼んでくれ、ということなのかもね、と思ったのですが…


調べてみると、これは当時、アンダーグラウンドで流行った(間違った)俗説、乾かしたバナナの皮を吸うとハイになれる、に由来するとのこと。


大多数の人々が文字を理解できない社会においては画像が主要なる「意味・意図の媒体」であり、それは現代でも標識といった形で日常的に見ることができます。


ブリューゲルの絵画などには、当時の人にはすぐ理解できるような「シンボル」が多く観られますが、すべて解読されるには至っていません。たとえば窓から箒が出ている部分は「不倫・不貞」のシンボルであると、とある研究者の著書にありましたが、これは豊穣なシンボリズムの一部でしかありません。ヒエロニムス・ボッシュに至っては謎だらけと言っても良いでしょう。中世の世俗的シンボリズムは、ヨーロッパを旅行された方には旧ギルド(職人組合のようなもの)のそれがお店の軒先などに観られることに気付かれたでしょう。


60年代後期、70年代初期にフランスを旅行した折には、「ロレーヌの十字架」を多く観ました。田園風景の中に散見される古い石の建物にこれが彫ってあるのですね。このシンボルは第二次大戦時のフランスのResistance、対ナチス抵抗運動のものであると教わりました。


言葉ではどうでしょう。ダヴィンチ・コードの元ネタである「The Holy Blood and the Holy Grail」ではHoly Grailのフランス語「Saint Graal」は「Sang Real」であり、イエス・キリストの血はメロヴィング王朝へと継承されたというトンデモ説が出てきます。ここから壮大なる数々の秘密が生じ、陰謀論あふれる物語が作られて行くわけですね。

蛇足ですが、邦訳「レンヌ=ル=シャトーの謎 - イエスの血脈と聖杯」は歴史的にはトンデモ本ですが、ヨーロッパやヨーロッパにおけるキリスト教のさまざまな側面について興味深い内容なので、それなりに一読の価値はあると思っています。


言葉に、表層的なそれとは異なる意味を隠すというのは、ポピュラー文化でも都市伝説的にビートルズの「Lucy in the Sky with Diamonds」が幻覚剤である「LSD」を、「2001年宇宙の旅」のコンピューター「HAL」は、それぞれの文字のアルファベットの次のものに置き換えると「IBM」であるなんてのがあります。


歌詞にもこの「Mellow Yellow」のように、表立って言うのは憚られる内容を、解る人には解るように、入れるという文化があります。


これは検閲や自粛を要求する社会ありきのものであるのかは議論のあるところだと思っています。LBGTへの理解が今ほどない時代のThe Kinksの「Lola」は、あのような詞の書き方で、今、同じインパクトがあったのか?という考察はあるにせよ、ということです。


私はこれとは異なる切り口で考えることも可能だと思っています。時代や社会よりちょっと普遍的には、ストレートな表現ではなく、受け手にマルチな解釈を許す・期待する、書き方が芸術の本分ではないか。今風に言えば、「察し」を複数想起させるような歌詞が「かっこいい」のではないか。この発想はやはり、サイケデリックからプログレ的なロックで育った故でしょうか。


詞と詩の距離感の問題とでもいいましょうか、あまりストレートな歌詞は面白く感じません。


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