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  • 執筆者の写真Yoji Yoshizawa

春の雪

今月12日に風邪をひいて後、19日経ちました。その間、武漢ウイルスが猛威をふるい、社会に大きな影響を及ぼしています。映画のようにゾンビに殺されるとすぐにゾンビ化するのではなく、保菌者に自覚症状がない病気の恐ろしさは本当のホラーです。不要不急の外出を控えることは自衛のためでもありますが、近しい人々や、袖触れ合う人たちを感染させるリスクを軽減させることでもあります。 今朝の東京は、雪です。それも降っているだけではなく、積もっています。 「春の雪」は、三島由紀夫最後の作品となった「豊饒の海」4部作の第1部です。言葉や、描かれる情景の美しさに心奪われた作品です。あるインタビュー(新潮カセットブック「サーカス・大臣・旅の絵本」収録)で、三島さんは、 「体力のあるうちにうんと長い小説を書こうと思って、今、計画しているところです。(中略)所謂、世代から世代に移って行くような小説ではなくて、なんかそうではなくて長くなる方法はないか。それを長年考えてまいりました。とにかくおじいさんがどうした、おばあさんがどうした、お父さんがどうした、おかあさんがどうした、その子がどうしたという話であれば、いくらでも長くなりうるんですが、そうでなくて、世界を、大げさに言えば、世界を包摂するような長い小説を、体力の十分あるうちに書いてみたい。それが私のこれから書きます小説の非常に原始的なる企図でございます」 と話しておられました。「豊饒の海」は、正に彼の言う「世代から世代」とは異なる「線」の連続性をもって成立している、世界的にも比類のない名作であると思っています。 武漢ウイルスの猛威が収まるまでまだしばらくの時間がかかるものと想像しています。 どうぞ、健康第一でお過ごしください。 「又、会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で」(豊饒の海、「春の雪」)


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