Yoji Yoshizawa
夢
今晩はソロライブ、ジャズギターをもってクラブに入っている。オレンジ色のライトに浸る、渋い色の木造のインテリアは暖かく懐かしい雰囲気を醸し出している。ステージのあるフロアにはすでに常連らしき連中が飲んでいる。うるさ型の人たちだ。店内の構造は複雑で小さな階段がそこここにある。
私の前座を務めるフィンランド人の留学生という細くて髪を緑に染めた若者が訳知り顔で色々と教えてくれる。若さと自信のなさからか、尊大な態度であるところが可愛いとも言える。ヘルプで入っている女の子はふたり。といってもホステスではない。
楽屋と思しき二階は屋上のように壁がないが、ビルの屋上ではない。そこで本番前に交換をしておこうと弦をケースからだそうとするが用意してあったはずのゲージのものが見つからない。困った。しょうがないから普通つかうものより軽いゲージのセットを出してみる。袋をやぶって弦を取り出すと、酸化してボロボロとくずれてしまった。
そこへヘルプの女の子が船のような形をしたパイプを持ってきてくれ、マリモのように固められたマリファナを「ほら」といって私の前に放り投げた。パイプにつめて吸ってみると、まずい。すぐ捨てる。「これちがうよ」と二人でにこやかに歩きさって行くヘルプの背中に声かける。
ママさんが来て、事務的用意をしながら世間話を始めると、階下からはフィンランド人の演奏がまずかったのか、彼がやじり倒されている声が聞こえてくる。「XXさんのアレだから」と若者が下手でも店で弾かせている理由のようなものを言う。
「XXさん、占いやってるし」。
「へぇー、そうなんだ」。
XXさん、なんなく誰だかわかるような気がする、とぼんやり夜の街や下を通る電車の光を生暖かい風を感じつつ思うが、どうでも良いことだ。
ママさんはヘルプの子たちより背が高くたいへんスタイルが良い美人だ。ミニスカートから筋肉質に光る足が伸びている。若い頃はダンサーだったらしい。衰えも見えるが十分綺麗だ。むしろとても色っぽい。彼女の足には黒いマジックで色々なメモが書かれている。演者の評価が書き込まれるのであろうか、「ギタリスト」の文字も数字などに混じって見える。
ここで目が覚めた。