Yoji Yoshizawa
森林療法とMbuti音楽
(オリジナルFB投稿:2016年5月5日)
もう数年前になりますが、書店で「回復の森」という本を見つけ、初めて森林療法という研究分野を知りました。上原巌さんという東京農大の方が提唱したもので、日本森林保健学会の会長も勤めておられるようです。森林環境が人間の身体・精神的健康に良い影響を齎すという発想をヨーロッパの森林での日常的なレジャーから得て、高齢者や障碍者、そして精神的課題を持つ若者に森林と絡んだ活動を取り入れた療法の実践レポートが「回復の森」です。
先日投稿した不可聴域周波数という因子をこの研究の一部分にできないものか。自然界におけるさまざまな不可視、不可聴の「情報・刺激」の統合的影響が森林療法を成立させている要因ではないか。などとBoysと散歩をしながら考えました。
私たちは人間として本能的に脳科学で言う「報酬系」を刺激する環境や活動を知っているのだと考えています。理屈抜きに「気持ちの良いものは気持ちが良い」のです。このことを科学的に解明する試みが脳科学と情報科学の領域から音楽に対してなされています。
私が30年来自分で「気持ちが良い」からやっている事のひとつにディレイをつかった即興的ポリフォニーの演奏です。最近はソロライブでやるようになりましたが「曲」という形式ではなく最初から最後まで即興なので録音したり人前で演奏することはありませんでした。
脳と音楽の研究においてはさまざまな文化の音楽の分析の試みがなされています。また文化人類学からは音楽の人間にもたらす効果の重要な一部分として環境や社会といった要素も考慮されています。この文脈ではルーマニアやグルジアの合唱、バリ島のケチャやガムラン、
そしてMbuti(以前はピグミー族と呼んでいました)の集団歌唱が取り上げられます。
先日気付いたのは、私が「気持ちが良いから」やっている即興演奏の方法論は上記Mbutiの音楽に見出せるということです。これまでもイメージとしてはバリのガムランや、神秘思想をバックボーンとするスーフィの音楽を想定していたのですが、Mbutiの歌唱の音の展開も似ていると不思議な気持ちにさせられました。イメージはしつつも踏襲することなく、今後も私流の方法論の追求は続けて行くのですが「なぜ気持ちが良いか」をさまざまな切り口で示唆されることはたいへん興味深いところであると思っています。
