• Yoji Yoshizawa

インド音楽の口三味線

最終更新: 2019年3月4日

コンナッコル(Konnakol)をご存知でしょうか。南インド音楽では、ソルカットゥ(Solkattu)という拍子(tala)を手でカウントしながら独特の音節を使ってリズムを表現します。このソルカットゥの音節の部分をコンナッコルと言います。簡単に言えば、「口三味線」です。 私が初めてこれを強く意識するようになったのは1976年リリースの「Handful of Beauty」というアルバムを聴いてからです。「Handful of Beauty」はShaktiというバンドによるものですが、これはマイルス・ディヴィスのバンドや、マハヴィシヌ・オーケストラで独特のプレイを聴かせてくれていたジョン・マクラフリンのインドの音楽家たちとのプロジェクトです。レコードに針を落とすと、声によるリズムの応酬があり、その衝撃はとても大きいものでした。 80年代に入り、日本でこの技術を学べないものかと色々問い合わせてみましたが、文献も見つからず、習得を断念していました。90年代にはニューデリーで色々と本を探したのですが、コンナッコルに関するものは見つからず、現地の友人に聞いても成果はありませんでした。 しかし21世紀になると色々と情報が得られるようになりました。英語圏では、ウェズリアン大学のディヴィッド・ネルソン(David P. Nelson)が「Solkattu Manual」を出版。デンマークのヘンリック・アンデルセンも著作や教則ビデオを世にだしており、私が衝撃を受けた、ジョン・マクラフリン自身の教則ビデオもあります。興味深いところでは、北欧のヘビメタ系ミュージシャンの中にこの方法論を採用している人が少なくないところです。 「口三味線」にもさまざまなものがあり、ムリガンダムやタブラといった打楽器で出す音に対応した音節は実にバラエティに富んだものになります。また大きく分けて、南北で音節の違いもあります。 私のソロプロジェクトでDuoの相方を務めてくれている吉見征樹さんは、1987年よりインドはムンバイにてタブラの大御所ウスタッド・アラ・ラカ・カーン氏と、その息子ウスタッド・ザキール・フセイン氏に師事 してきた正統派タブラ奏者です。彼の場合は北インド系、タブラ奏者ということもあり、コンナッコルではなく「Bol」(ボル)を体得しています。 私は打楽器奏者ではないので、「簡易バージョン」を勉強しています。初歩的な説明をすると、ひとつのビートを細分割するにあたり、1つは「ター」、2つにするのであれば「タケ」、3つは「タキタ」、4つは「タケディミ」、そして5つは「ダディゲナド」となり、ボレロのリズムですと「ター、タキタ、ター、タキタ、ター」と発声するわけです。これだけだと難しくないのですが、16分音符4つの連続するビートを「タキタ」と3つで分けて行くなんてことが始まると簡単ではありません。 西洋音楽教育を受けた方は、リズム音符学習に「1と、2と、3と・・・」のように教わった経験もおありでしょう。1996年に「Takadimi: A Beat-Oriented System of Rhythm Pedagogy」(Richard Hoffman, William Pelto, and John W. White)という論文が書かれています。これはインドのシステムを西洋音楽教育に取り入れることを提唱しているものです。 閑話休題。コンナッコルを体得するには程遠い私でありますが、朧気ながらも雰囲気程度にインド音楽をやられる方々のマインドが見えた心持ちになった頃、吉見征樹さんとの出会いがあり、事後、二人でのライブ活動を始めました。 当然のことですが、私がインド音楽プロパーなアプローチで彼と演奏することはありません。そのようなことは、意図するだけでも彼に失礼であります。なにしろ吉見さんはインド音楽を「生きて」いる訳ですから、ド素人の私がそこで勝負を挑むことはありえません。 私は私の音楽で勝負。しかし、単に異なるジャンルの音楽家が一緒に演奏するというコラボレーションには興味がありません。何らかの独自性をもった融合をそこから創造したいのです。これは継続的プロセスであり、紆余曲折を経ながら成功・失敗を繰り返して行くことになりますが、そこには確実に(少なくとも私にとって)喜びがあります。 吉澤洋治x吉見征樹Duoのこれからのライブスケジュールは以下のとおり。私たちの創造プロセスを多くの方に体験していただけたらと願っています。

3月4日(月) 横浜 Dolphy TEL: 045-261-4542 

3月23日(土) 西新井カフェ・クレール TEL: 03-3880-6645 

4月19日(金) @町田 Into The Blue TEL: 042-850-9378


左:吉見征樹(タブラ)

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